三上 万紀子

今回昔話を舞台化するにいたって、子供の頃に欠かさず見ていた「まんが日本昔話」や、小学校の図書館でむさぼるように読んだ昔話の数々を思い出しました。

同じ頃、グリム兄弟やアンデルセンの西洋のおとぎ話にも興味を持ちこちらも、全集を片っ端から読んだのですが、日本の昔話との違いを子供ながらに感じたのを覚えています。
その頃は、何となく匂いが違うと感じていたようで、例えば日本の昔話は苔と緑茶、そしてお線香の匂いがする。そして西洋の童話は土と血の匂いがするとか、7、8歳の時の動物的感覚でなんとなく仕分けをしてました。

日本の昔話は、物語として西洋的な意味でのはっきりとした『終わり」がない場合もあるし、また明確なメッセージや教えがないお話もあります。
ですが、いつもそこにあるのは厳しく、貧しい生活の中で小さな幸せを見つけながら淡々と生きる登場人物。そして自然への畏敬の念。
日本の昔話では人間や動物、化け物が自然と切っても切れない関係だったということが良く分かります。それは全ての物に命があり、精霊が宿っていると信じられていた世界。生きている物は皆神様だった時代。
現代の日本でも昔話を通じて、少しでも自然を敬う心を取り戻したいものです。

今回の東京公演に先立って、これらの物語の舞台となる山形の庄内地方で公演させて頂きました。鶴岡の玉泉寺と酒田の本間美術館です。幸せなことに両方とも日本景勝名園に指定されている素晴らしい庭園での公演でした。
まさに、自然と一体となりえるような背景で演じた事を思い出し、少しでも東京の皆様にも山形の美しい山々と自然を感じて頂けることを願います。